社長ブログ

「その力を、どこに向けるのか」 ~ 同じ月を見ながら想う ~

2026.04.14

 先週7日、アルテミス2号が大きな偉業を成し遂げました。
 人類を乗せた宇宙船が、再び月へと向かい、その裏側を通過し、無事に帰還しました。その事実は、私たちにとって確かな希望であり、嬉しい出来事です。長い年月をかけて積み重ねられてきた技術と努力が、いま再び実を結び、私たちの可能性が広がっていることを感じさせてくれます。

 私たち人間は、長い時間をかけて、驚くべき力を手に入れてきました。
 遠く離れた場所と瞬時につながり、空を越え、海を越え、そして今、再び月へと手を伸ばしています。アルテミス計画は、その象徴のひとつです。この計画には、莫大な資金と最先端の技術、そして多くの人々の知恵と努力が注がれています。それはまさに、人類の積み重ねてきた歩みの結晶とも言えるものです。しかし、その輝かしい成果のすぐ隣で、私たちは別の現実も生きています。

 同じ時に、紛争や戦争を続けているという現実です。
 ウクライナやイランでは、今この瞬間にも多くの人々が傷つき、命が失われています。そこには深い悲しみと、消えることのない憎しみだけが残ります。戦争は、決して新しいものを生み出しません。むしろ、大切なものを壊し、人と人との間に深い溝を残すものです。多くの人々が恒久的な平和を望んでいるにもかかわらず、その願いはまだ完全には実現していません。ここに、私たちが目をそらしてはならない現実があります。

 月へ向かう力と、争いへ向かう力。この一見すると相反する二つの力は、どちらも私たちの中から生まれています。私たちは、創り出すこともできれば、壊すこともできる存在です。だからこそ問われるのは、「どのような力を持っているか」ではなく、「その力をどこへ使うのか、どこに向けるのか」ということなのではないでしょうか。

 未知の世界へと向かう行為は、単なる技術の進歩ではありません。それは、「まだ知らないものがある」という事実を受け入れる謙虚さであり、「理解し、活用したい」と願う心の現れでもあります。その探求心は、本来、誰かを傷つけるものではありません。むしろ、世界を広げ、他者と分かち合おうとする、穏やかな力です。私たちの国、日本は、かつて大きな悲しみを経験しました。広島・長崎への原爆投下という出来事を経て、戦争を放棄するという道を選びました。それは、過去を否定するためではなく、未来に同じ過ちを繰り返さないための選択だったはずです。もちろん、それだけで世界のすべてが変わるわけではありません。
 現実にはさまざまな立場や事情があり、簡単に争いをなくすことができない場面もあります。それでもなお、多くの人が平和を願い続けているという事実は、決して小さなものではないと思います。私たちは、矛盾を抱えた存在です。争う理由を持ちながらも、同時に理解し合おうとする力も持っています。そのどちらか一方だけを消し去ることはできません。だからこそ大切なのは、どちらを選ぶかではなく、どちらにより重きを置いていくのか、ということなのかもしれません。

 ほんの少しでも、誰かを傷つけるためではなく、誰かと分かり合うために力を使うことができたなら。ほんの少しでも、破壊ではなく、創造へと力を向けることができたなら。

 その積み重ねが、未来を少しずつ変えていくのではないでしょうか。月へ向かうという行為は、遠い宇宙への挑戦であると同時に、私たち自身のあり方を問い直す機会でもあるように思います。
 夜空を見上げたとき、その先にある月は、どこにいる誰にとっても同じものです。国境も、立場も、違いも越えて、同じ月を見上げている誰かがいます。もしそのことを、ふとした瞬間に思い出すことができたなら、もう少しだけ優しくなれるのかもしれません。そしてその優しさこそが、これからの世界がどこに向かうのかを、静かに決めていくのだと思います。<令和8年4月14日 NO.51>

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